椅子はありません(持ち帰りだけ)・予約と取り置きはできません/一日一鍋・40回で終わり/一回に6個ずつ/日曜・月曜定休

国立・谷保

菜種菓子製造(揚げドーナツ)ドーナツ 菜種朝いちばんが、いちばんではありません。

一鍋 40 回 ── 盛り終い

谷保駅から北へ六分、旧甲州街道から一本入った平屋です。朝、新しい菜種油を鍋に入れて、その日は四十回だけ揚げます。四十一回目はありません ── 残っていても落とします。ドーナツは五種類、かけるのは粉だけで、衣はかけません。そして油は使うほどに変わるので、一回目と二十回目と四十回目では別のものが揚がります。どれがいちばん軽いかを先に書いておくと、一回目ではありません。

  • 一日一鍋・四十回で終わり
  • 菜種油(圧搾)/一日で落とします
  • 五種・粉だけ(衣はかけません)
  • 椅子はありません(持ち帰りのみ)
  • 予約・取り置き・発送はしません
  • 売り切れ次第終了
よその店のドーナツのケース。木の棚が三段、ガラスの向こうに何十種類ものドーナツと、品名を書いた札が立っている。
Photo: Viktor Forgacs / Unsplash
写真はよその店のケースで、菜種の店先ではありません。札に他社の商品名がいくつも読めますが、実在する登録商標で、当店とは何の関係もありませんし、当店はどれも使っていません。英語で書かれた品名も向こうの品書きで、うちのものではありません。三段の棚に何十種類も並んでいますが、うちは五種類、棚は一段です ── チョコレートも、砂糖の衣も、クリームも入れていません。そしていちばん大事なところを書いておくと、この写真のドーナツは、どれも揚がってから何分経っているのか分かりません。分からないのは写真のせいではなく、ガラスのケースのせいです。ケースは、ドーナツから時間を隠すための家具で、うちに置いていないのはそのためです。

01Pot

朝、新しい菜種油を 18L 入れて、その日は 40 回だけ揚げます。一回に 6 個、全部売れて 240 個。四十一回目はありません ── 生地が残っていても、油は落とします。

何回目かを選んでください。
その回に何が起きるかを返します。

1 回目40 回目

一鍋は 18L、一回に 6 個、一日 40 回まで。全部売れて 240 個です。たいていは三十回台で生地のほうが先に終わります。

この鍋で 盛り の帯

15回目/ この回で 6

色が早くつく何度か使った油です。色が早くつくので短く済み、外が薄く、中が軽い。この店がいちばん長くやっているのがこの帯で、一日の三分の二がここに入ります。

いちばん揃う帯です。生地を入れてからの浮きかたがそろい、六個が同じ色で上がります。

この帯に合わせているのは 素・砂糖・肉桂・餡 です。ただし、その時間に残っているかどうかは別の話です ── 売り切れた種類から順に消えていきます。

いま何回目かは、ここでは分かりません。回数は時計で進まず、売れた数で進むからです ── この装置が返すのは「その回に何が起きるか」であって、「いまが何回目か」ではありません。それが分かるのは、店の札の前に立ったときだけです。

上の回数は、この店が決めたものです。測って出した数ではありません。四十という数字も、どこかの基準から持ってきたのではなく、この鍋とこの生地で、ここから先は出したくないと思うところに引いた線です。

減ったぶんの油は足しません。継ぎ足すと、その鍋が何回目なのか誰にも言えなくなります。四十回のあいだに減る量は、はじめから見込んで入れてあります。

02Three

三段

同じ生地を、同じ温度で、同じだけ沈めても、朝と昼と夕方では別のものが上がってきます。変わっているのは生地ではなく油のほうです。三つに分けて、札に書いて出しています。

1 – 6回目

色が薄い

新しい油です。生地に熱が入るのが穏やかで、色がつくのが遅い。そのぶん長く沈めることになるので、衣がやや厚く、重く仕上がります。粉をまぶすと、粉のほうが立ちます。

この帯に合わせているもの:砂糖・きな粉

盛り7 – 30回目

色が早くつく

何度か使った油です。色が早くつくので短く済み、外が薄く、中が軽い。この店がいちばん長くやっているのがこの帯で、一日の三分の二がここに入ります。

この帯に合わせているもの:素・肉桂・餡

終い31 – 40回目

色が濃い

色が濃く、香りが重くなります。焦げてはいませんが、油のにおいが前に出ます。好きだと言って夕方だけ来られる方がいるので、そう書いて出しています。

この帯に合わせているもの:餡・肉桂

上から順にいい、という話ではありません。いちばん新しい油でいちばんいいドーナツが揚がるなら、この札は要りませんでした。実際には一回目がいちばん重く、色がつくのを待っているあいだに油を吸います。盛りが軽いのは、油が新しいからではなく、何度か使ってあるからです。

三段で値段は変えていません。若を安くすると、若は劣ったものになります。そうではなく、別のものです ── 朝の砂糖がいいと言って開店に来られる方と、夕方の餡がいいと言って五時前に来られる方が、両方いらっしゃいます。

何時に何回目になるかは書けません。回数は時計ではなく、売れた数で進むからです。雨の平日は昼を過ぎても十回目のことがあり、連休の土曜は十時半に二十回目のことがあります。いま何回目かは、店の札にだけ出ています。

03Oil

揚げ油をいつ替えるか。これには、全国どこでも同じという数値がありません。数値が無いのに決めなければならないので、どう決めたかを書いておきます。

いつ替えるかを決めているのは、うちです

2021年6月から、決めて、やって、書き留めることが義務です

食品衛生法が変わって、うちのような小さな菓子屋にも HACCP に沿った衛生管理が義務になりました。大きな工場と同じことをやるわけではなく、業界団体の手引書に沿って、自分の店の手順を決めて、そのとおりにやって、記録を残す ── というやりかたです。保健所が見るのはこの記録です。

ところが、油そのものには数値がありません

「何回まで」「どの数字を超えたら」という全国一律の線は、揚げ油には引かれていません。むかしは行政の示した衛生規範に酸価という数字の目安があって、揚げ物の店はそれを頼りにしていましたが、HACCP のしくみに移るときに、その規範ごと役目を終えました。いま残っているのは、店が自分で決めるという手続きのほうです。

これは緩くなったという意味でも、厳しくなったという意味でもありません。決める人が国から店へ移った、という意味です。だから揚げ油について「国の基準を満たしています」と書ける店は、どこにもありません。うちも書けません。

うちの決めごとは三つです

  1. 01一鍋四十回まで。四十一回目はありません。
  2. 02一日で落とします。翌日に持ち越しません。
  3. 03減っても継ぎ足しません。継ぎ足すと、その鍋が何回目か言えなくなります。

魚も肉も揚げないので、この油はドーナツと、冬のあいだの林檎しか通りません。それでも四十回で終わりにしているのは、三十回台の後半で香りが変わるのが分かるからです。数字で決めたのではなく、そこで止めたいと思う場所に線を引いて、それを動かさないことにしました。

試験紙は、やめる理由にしか使いません

油の劣化を見る試験紙は置いてあります。ただし使いかたを一方向に決めていて、紙が先に「もう替えろ」と言えば、そこで終わりにします。逆はしません ── 三十九回目で紙が何も言わなくても、四十回で終わりです。

紙は、続けてよい理由には使いません。使えるようにしてしまうと、いちばん替えたくない日(混んでいて、生地がまだ残っていて、油が高い日)に、紙が背中を押す道具になります。そういう日のためにこそ、回数のほうを先に決めてあります。

記録は毎日つけていますが、貼り出しません

その日の油を入れた時刻、何回揚げたか、落とした時刻。保健所の方が来られたときにお見せするものです。お客さまに見せないという意味ではありません ── 訊かれればお見せします。ただ、店先に貼り出すことはしません。

貼り出すと、あの数字のほうが約束に見えるからです。うちが約束しているのは数字ではなく、四十回で落とすという決めごとのほうです。数字は、決めごとを守れたかどうかの記録にすぎません。

使い終わった油

使い終わった油は、回収の業者に引き取ってもらっています。事業から出る廃食用油は産業廃棄物なので、家庭の油のように流しに捨てたり、燃えるごみに出したりはできません。「持って帰りたい」と言われることがありますが、お渡しできません ── 決まりの上でも、四十回使った油を家でもう一度使うのは勧められる話でもないからです。

所管は保健所です(この店は東京都多摩立川保健所の管轄です)。菓子製造業の許可を出したのも、この記録を見に来るのも同じ役所ですが、許可のほうは設備と人についてのもので、記録のほうは毎日の手順についてのものです。別のことを見ています。

04Changing

替えどき

ここから下は、うちの鍋ではなく、家の鍋の話です。よく訊かれるので置いてあります。この装置は「替えてください」か「分かりません」しか返しません ── まだ使えます、とは言いません。

家の鍋の話です。当てはまるものを選んでください(いくつでも)。

左で、当てはまるものを選んでください。

返ってくるのは「替えてください」か「分かりません」のどちらか です。この装置は、まだ使えます、とは言いません。

うちの鍋は 40 回で終わりにしていますが、それを家の鍋に当てはめないでください。量が違います ── 18L の鍋と家の小鍋では、一回で受ける負担がまったく違います。

これは当店の決めごとで、法律の基準ではありません。揚げ油をいつ替えるかについての全国一律の数値は、いまありません。試験紙は、やめる理由にしか使いません、というのが店での使いかたで、この装置も 同じ向きに作ってあります。

選んだ内容も、出た答えも、どこにも送っていません。この装置は、お使いの端末の中だけで動いています。

05Menu

品書き

かけるのは粉だけです。砂糖、シナモン、きな粉。上がってから三十秒のあいだにまぶします。

¥180

何もかけないリング

生地そのままです。盛りの帯で揚がったものがいちばん軽くなります。

盛り

砂糖

¥190

さとうグラニュー糖

上がってすぐ、熱いうちにまぶします。若の帯だと、粉のほうが立ちます。

盛り

肉桂

¥200

にっきシナモンと砂糖

油の香りが前に出る終いの帯と合います。夕方にいちばん売れます。

盛り終い

きな粉

¥200

きなこきな粉と少しの塩

若の帯の、色の薄いものに合わせています。国産大豆のきな粉です。

¥240

あん粒餡入り・穴なし

中に餡が入るので穴がありません。水分があるぶん、油が少し落ち着いてからのほうが上がりが安定します。

盛り終い

かけないもの

チョコレートも、砂糖の衣(アイシング)も、クリームもありません。かけるには一度冷まさなければならず、冷ましたものは、この店が話していることの外へ出てしまうためです。

十一月から二月だけ、林檎を輪切りにして生地をつけて揚げます。五種の外で、その日の分だけです。

小麦粉は北海道産、油は国産菜種の圧搾、砂糖はグラニュー糖、餡は十勝産小豆を店で炊いています。小麦・卵・乳・大豆を同じ厨房で扱っています。

06Cannot

できないこと

先に書いておいたほうがよいことです。どれも、あとから言われるより先に読んでいただいたほうが早い話です。

チョコレートも、砂糖の衣もかけません

衣をかけるには、一度冷まさなければなりません。冷めたドーナツに衣をかけて並べれば、見た目はよくなりますし、日持ちもします。ただ、そうすると渡すまでの時間がこちらの都合で伸びます。この店が話しているのは揚がってからの時間のことなので、そこを伸ばすものは置かないことにしました。かけるのは、熱いうちにまぶせる粉だけです。

お取り置きはできません

取り置きは、揚がってから渡すまでの時間を、こちらの都合で伸ばすことです。お電話でのご予約も同じ理由でお受けしていません。並んでいただくしかないのですが、そのぶん行列が長くなりにくいように、一度に六個ずつしか揚げていません。

発送はしません

揚げ菓子は時間で変わります。届いたころにどうなっているかを、こちらで決められません。贈り物の箱もありません。

何時に何が揚がるかは、書けません

回数は時計ではなく、売れた数で進みます。雨の平日は昼を過ぎても十回目のことがあり、連休の土曜は十時半に二十回目のことがあります。だからこのページに時刻表はありません。いま何回目かは、店の札にだけ出しています。

椅子はありません

持ち帰りだけの店です。客席を置くと飲食店営業の許可が別に要るので、取っていませんし、置きません。店の前で立ち止まって召し上がる方がいますが、近所のお宅の前なので、少し離れてからにしてください。

まとめ買いは、一度に十二個までです

一回に六個しか揚がらないためです。二十個、三十個のご注文をお受けすると、そのあいだ後ろの方が何回ぶんも待つことになります。十二個を超えるぶんは、いったん最後尾に並び直していただいています。

一番おいしいのは朝いちばんです、とは書きません

書けないからです。新しい油は色がつくのが遅く、そのぶん長く沈めるので、一回目がいちばん重く揚がります。朝いちばんに来ていただけるのはうれしいのですが、それは早い時間なら五種類とも残っているという話で、揚がりの話ではありません。

使い終わった油はお分けできません

事業から出る廃食用油は産業廃棄物で、業者に引き取ってもらう決まりです。それを別にしても、四十回使った油を家でもう一度使うのは勧められません。

07Queue

買いかた

小さい店で、並びかたに癖があります。先に書いておきます。

列は建物に沿って、北へ

南は隣のお宅の玄関なので、そちらへは伸ばさないでください。入口に矢印を貼ってあります。

揚がるのは六個ずつ、三分おきくらい

前の方の注文で六個が出てしまうと、次が上がるまで二、三分待ちます。待っているあいだに、何回目かの札が変わることがあります。

売り切れたら終わりです

生地がなくなった時点で終わりです。四十回まで揚げても 240 個、たいていは三十回台で終わります。夕方に来られる場合は、餡と肉桂だけが残っていることが多いです。

紙に包んで、紙の袋に入れます

二つ以上のときは箱に入りますが、箱も紙です。手提げの代金はいただきません。

  • その場で紙に包んでお渡しするだけなので、袋に貼る食品表示の義務はかかりません。小麦・卵・乳・大豆を同じ厨房で扱っているので、そのことは札に書いてあります。
  • 椅子を置いていないので、消費税は持ち帰りの8%だけです。「店内でお召し上がりですか」とお訊きする場面がありません。
  • 予約、取り置き、発送はしていません。
  • まとめ買いは一度に十二個までです。十二個を超えるぶんは、並び直していただいています。
  • 列は建物に沿って北へ伸ばしてください。南は隣のお宅の玄関です。
  • 生地がなくなった時点で終わりです。四十回まで揚げても最大二百四十個です。
  • 自転車は店の前ではなく、二軒北の駐輪スペースへお願いします。

08Asked

よく訊かれること

店先で、実際に訊かれることです。ほとんどが同じ二つ三つに集まるので、そのまま書いてあります。

何時に行けば揚げたてですか
開いているあいだは、たいてい揚げたてです。六個ずつしか揚げていないので、ケースに溜めていません。ただし、何時にどれが揚がるかは決められません ── 回数が売れた数で進むためです。
朝いちばんが一番おいしいのでは
揚がりの話でいえば、違います。一回目は色がつくのを待つぶん長く沈めるので、いちばん重くなります。軽く揚がるのは七回目から三十回目くらいまでです。朝いちばんの良さは、五種類とも残っていることのほうです。
油は何を使っていますか
国産菜種の圧搾油です。一鍋 18L で、朝に新しく入れて、その日のうちに落とします。減っても継ぎ足しません。
何回目かは、どこに書いてありますか
レジの横の板に、その日の回数が出ています。札の色が三つに分かれていて、若・盛り・終いのどれかが分かります。ページには出せません ── 時計で進まないからです。
アレルギーの表示はありますか
その場で紙に包んでお渡しするだけなので、袋に貼る表示の義務はかかりません。ただ小麦・卵・乳・大豆を同じ厨房で扱っていますので、札に書いてありますし、訊いていただければお答えします。
予約して取り置きできませんか
できません。取り置きは、揚がってから渡すまでの時間をこちらの都合で伸ばすことになるためです。申し訳ないのですが、並んでいただいています。
クレジットカードは使えますか
使えません。現金とQR決済だけです。端末を置いていないので、いまのところ対応の予定もありません。

09Shop

予約はありません。並んでいただくだけです。五種類とも揃っているのは午前中で、夕方は餡と肉桂が残っていることが多いです。売り切れの日は、店先に板を出して、その日の回数を書いたまま閉めています。

買いにいらっしゃるまえに

火 – 土
8:00 – 売り切れまでたいてい15時台
日・月
定休
油を入れる
毎朝 7:30
油を落とす
その日の最後の回のあと持ち越しません
住所
東京都国立市谷保0-0-0
交通
JR南武線 谷保駅 北口から徒歩6分(旧甲州街道から一本北へ入った、平屋の並びです。駐車場はありません)
電話
042-500-0039(揚げている時間は出られないことがあります)

梶井 穂

かじい みのり店主

製パン工場に六年、揚げ菓子の製造ラインに四年。2025年にここを開けました。揚げるのも売るのも一人です。

工場では、油の交換は台帳の日付で決まっていました。決まっているのが楽なのは分かります。ただ鍋の前にいると、日付より先に分かることがあります。自分で決めなければいけなくなったので、数字ではなく回数で決めました。

顔写真はありません。実在する方の顔を、架空の人物の名前と経歴に貼らないためです。顔の代わりに、穴の印を置いています。鍋の写真もありません ── 一回目の油と四十回目の油は、写真ではほとんど同じように写ります。載せれば「きれいな油です」としか言わないことになりますが、このページが書いているのは、その二つが違うという話です。